90年代の「学生運動家」たちのこと

20年以上前の話で恐縮だが、わたしの母校(以下A大)にいた学生運動家について書いてみたい。

 

入学すると、学生は全員「自治会費」なるものを徴収されて自治会員となるのだが、これは8000円であったと記憶している。

 

自治会の中心メンバーは「学生運動」に身を捧げるため留年年度いっぱいまで卒業せずに在学している学生や、数人の現役学生からなっていた。

 

彼らはプレハブ小屋に籠もり、模造紙で扇情的な言葉を並べたポスターを作って階段の踊り場に貼ったり、わら半紙で大量のビラを作ったりしていた。

 

それだけならさして実害はないが、迷惑だったのが、講義の前にマイクとビラを携えて講堂や教室に現れ、ビラを配り、集会やデモへの参加を呼びかけ、当時起こっていた政治問題・社会問題について扇情的に学生に語りかけたことだ。

 

わたしはビラを突き返していたが、わたしだけでなく誰にも必要なかったのでみな教室を去るとき放置し、教室の床は常にビラでいっぱいだった。そんな大学だと知っていたら行かなかった。

 

1990年代半ばである。全共闘時代の話ではない。政治関連の学部もない大学で、正直誰が彼らの話に興味を持っただろうか。人を引きつけるような話術があるわけでもない。大学は平和そのもので、世の中に一丸となって戦うべき事件があるわけでもなかった。

 

要するに、彼らは何かに突き動かされて学生運動をしていたのではなく、学生運動のために学生運動をしていたのだ。それはそれなりに彼らには意味があったのだろうけど、自治会費8000円が模造紙やわら半紙やおそらく上納金に消えたと思うと、何もわからないうちに払わされたことに腹が立ってならない。

 

数年前、卒業して初めて学園祭に行ってみた。あのプレハブ小屋はなくなっていたが、学生運動は続いているのだろうか。たまに思い出すことがある。彼らのことだけで卒論一本書けそうな、あの異様な集団のことを。ヘルメットを被って警察隊とぶつかったりする、学生運動のリーダーなのだ、きっと彼らの中で彼らはいつでも。 

 

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